【命短し香りは高し】 ― 九条ネギ餃子、初物の一日に寄せて ―

空は薄曇りながら、風は心地よく、新緑の香りが町の隅々にまで行き渡る一日となりました。

本日、工場では「九条ネギ餃子」の仕込みに勤しみました。数にして1,200個。いずれも、今朝届いたばかりの“初物”九条ネギをふんだんに使用しております。


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■ 九条ネギ、初物の香り

今朝届いた九条ネギは、根っこごと収穫された「初物」でございます。
通常、九条ネギは根を残して切り取ることで再生を繰り返す「刈り取り型」の収穫を行いますが、本日のものは“根ごと”引き抜かれたもの。土の養分をたっぷりと蓄えた状態で、葉も根も張りがあり、香りの立ち上がりがまったく違います。

切った瞬間に広がる清々しさ。手に持てば、しっとりと水を含み、軽く押すとみずみずしい音を立てて弾けるような質感。まさに、「命短し香りは高し」と呼ぶにふさわしい、旬の中の旬です。


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■ 包み込み、閉じ込める

餡には、厳選した国産豚肉を使用。ネギとの相性を最大限に生かすため、肉の脂はやや控えめに。代わりに、ネギそのものの香味を際立たせるよう、調味料も塩と香り高い醤油を少量のみで整えております。

この日だけは、皮を包む職人たちも、ネギの切れ端が空気に触れて変わる香りに耳を澄ませながら、一つ一つ丁寧に包み上げました。

「これを口にしたとき、ふっと季節を感じてもらえれば」
そんな想いが、包みのひだの一つ一つに込められています。


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■ 初物を味わうということ

「初物を食べると七十五日長生きする」と申しますが、昔の人々は、自然の循環の中で得られる“最初の一口”に、命の気配を強く感じていたのではないでしょうか。

九条ネギも、初物となれば別格。いわば、その年の“最初の香り”を食すことでもあります。


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■ 未来へ残すひと皿

今回の九条ネギ餃子には、収穫された根も一部持ち帰らせていただき、工場の裏庭で土に返す予定です。根を引いて終わるのではなく、命を循環させる営みの一環として。職人の手が自然のサイクルに加わること、それもまた、私たちの点心作りのひとつの形です。


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「たかが餃子」と言われることもあります。
しかし、私たちはそうは思いません。

たった一つの餃子に、誰かの手間と時間と、自然の恵みと、未来への想いをすべて閉じ込める。
その意識を持って、一日一日仕込んでおります。


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本日仕込んだ1,200個の九条ネギ餃子。
お届けできる日を心より楽しみにしております。


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【本日の仕込み】
・九条ネギ餃子（初物使用）……1,200個


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