【春の満月に寄せて -月と月餅のお話-】
こんにちは。京都点心福で日々点心づくりに携わっております、点乃(てんの)と申します。
春の京都は、桜が舞い散り、木々の新芽がやわらかな緑をのばす、美しい季節を迎えております。伏見の台所も、筍や山菜といった春の恵みに囲まれ、台所仕事の手も自然と弾んでまいります。
さて、先日の4月13日は「満月」の夜でした。けれども空はあいにくの曇り模様で、楽しみにしていたお月さまは雲の向こうに隠れたまま。名残惜しい気持ちで、しばし空を眺めておりました。
この時季の満月は「ピンクムーン」と呼ばれています。実際に月が桃色に輝くわけではありませんが、欧米では春に咲くフロックスという花にちなんで名づけられたそうです。日本でも旧暦では「卯月の望月」と呼ばれ、春の満月は特別な意味を持っていたと聞きます。
満月といえば、やはり「月餅」を思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか。月餅は本来、中秋節(秋の満月)に供える中国の伝統菓子ですが、「京都点心福」ではこの春の季節にも、満月に思いを馳せながら月餅を丁寧に作っております。
当店の月餅は、本場のものよりもやや小さめで、日本の方のお口にも合うよう甘さを控えめに仕上げております。白餡や黒餡の定番はもちろん、栗や胡桃、季節の果実を取り入れた変わり餡もご用意しております。見た目も小ぶりで上品ですので、贈り物やお茶の時間のお供にも大変ご好評をいただいております。
職人たちは一つ一つ、まるで月の満ち欠けに心を重ねるように、丁寧に皮をのばし、餡を包み、焼き上げます。その手仕事は、日々の忙しさの中にあっても静かで穏やかな時間を運んでくれます。
13日の夜には満月が見えなかったものの、翌日の十四夜、さらに十五夜には澄んだ空に美しい月が浮かびました。厨房の窓からふと空を見上げると、まあるく輝くお月さまが、静かに夜を照らしてくれていました。
点心づくりも、どこか月と似ているなあと感じます。「満ちる」ときがあれば「欠ける」ときもある。形も味わいも、余白を大切にすることで、より豊かになるものだと思います。そのバランスを大事にすることこそが、私たち職人の仕事の真髄だと、日々あらためて感じております。
月は昔から、人の想いを映すものとして愛されてきました。誰かを想って見上げたり、遠くの人へ願いを届けたり……。私たちの作る月餅も、そんなふうに、どこかで誰かの心に寄り添える存在になれたらと願っております。
季節はこれから、新緑がまぶしくなる初夏へと向かっていきます。ですが夜空を見上げれば、変わらず、あのやさしい光が照らしてくれることでしょう。次の満月も、そして秋の中秋節に向けても、心を込めて、月餅を包み続けてまいります。
「月餅」は、ただのお菓子ではありません。季節のうつろいと、遠く離れた人々の想いをそっとつなぐ、小さな橋のような存在です。
今夜もまた、一つひとつ、まあるいお月さまを思いながら、手のひらにやさしく包み込んでおります。
京都点心福 点乃(てんの)
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#ピンクムーン #満月と月餅 #京都点心福 #春の和菓子 #点心職人の手仕事 #お月さまに想いを #伏見から届ける味
春の京都は、桜が舞い散り、木々の新芽がやわらかな緑をのばす、美しい季節を迎えております。伏見の台所も、筍や山菜といった春の恵みに囲まれ、台所仕事の手も自然と弾んでまいります。
さて、先日の4月13日は「満月」の夜でした。けれども空はあいにくの曇り模様で、楽しみにしていたお月さまは雲の向こうに隠れたまま。名残惜しい気持ちで、しばし空を眺めておりました。
この時季の満月は「ピンクムーン」と呼ばれています。実際に月が桃色に輝くわけではありませんが、欧米では春に咲くフロックスという花にちなんで名づけられたそうです。日本でも旧暦では「卯月の望月」と呼ばれ、春の満月は特別な意味を持っていたと聞きます。
満月といえば、やはり「月餅」を思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか。月餅は本来、中秋節(秋の満月)に供える中国の伝統菓子ですが、「京都点心福」ではこの春の季節にも、満月に思いを馳せながら月餅を丁寧に作っております。
当店の月餅は、本場のものよりもやや小さめで、日本の方のお口にも合うよう甘さを控えめに仕上げております。白餡や黒餡の定番はもちろん、栗や胡桃、季節の果実を取り入れた変わり餡もご用意しております。見た目も小ぶりで上品ですので、贈り物やお茶の時間のお供にも大変ご好評をいただいております。
職人たちは一つ一つ、まるで月の満ち欠けに心を重ねるように、丁寧に皮をのばし、餡を包み、焼き上げます。その手仕事は、日々の忙しさの中にあっても静かで穏やかな時間を運んでくれます。
13日の夜には満月が見えなかったものの、翌日の十四夜、さらに十五夜には澄んだ空に美しい月が浮かびました。厨房の窓からふと空を見上げると、まあるく輝くお月さまが、静かに夜を照らしてくれていました。
点心づくりも、どこか月と似ているなあと感じます。「満ちる」ときがあれば「欠ける」ときもある。形も味わいも、余白を大切にすることで、より豊かになるものだと思います。そのバランスを大事にすることこそが、私たち職人の仕事の真髄だと、日々あらためて感じております。
月は昔から、人の想いを映すものとして愛されてきました。誰かを想って見上げたり、遠くの人へ願いを届けたり……。私たちの作る月餅も、そんなふうに、どこかで誰かの心に寄り添える存在になれたらと願っております。
季節はこれから、新緑がまぶしくなる初夏へと向かっていきます。ですが夜空を見上げれば、変わらず、あのやさしい光が照らしてくれることでしょう。次の満月も、そして秋の中秋節に向けても、心を込めて、月餅を包み続けてまいります。
「月餅」は、ただのお菓子ではありません。季節のうつろいと、遠く離れた人々の想いをそっとつなぐ、小さな橋のような存在です。
今夜もまた、一つひとつ、まあるいお月さまを思いながら、手のひらにやさしく包み込んでおります。
京都点心福 点乃(てんの)
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