【つばめと蒸籠と、初夏の風に包まれて】
皆さま、こんにちは。
気温も少しずつ上がり、初夏の空気が町を包みはじめました。青空を見上げれば、つばめが元気に飛び交っています。小さなくちばしで藁や枝を集めては、軒先に巣を作る姿――そんな風景に出会うと、なんだか心が和みます。
最近は、私たちの工場近くにもつばめが顔を出すようになり、柱の上を見上げたり、梁を確認したりと、どうやら巣の場所を探しているようでした。素材を集めて、納得のいく場所を見極めてから、丁寧に巣を仕上げていく様子は、私たち点心職人の仕込みの姿勢にも通じるものがあります。
さて、本日も工場ではたくさんの点心が蒸籠に並びました。
だし焼売450個、えび焼売450個――合計900個の焼売を仕込みました。
だし焼売は、京都らしく昆布と鰹から丁寧に取った一番だしをたっぷり使い、豚肉の旨みをやさしく引き出しています。噛んだ瞬間に広がる、まろやかな香りが特徴です。
一方のえび焼売は、ぷりっとした食感とほんのりとした甘みが魅力。海老の旨味と食感を引き立てるよう蒸しあげています。蒸しあがった焼売から立ちのぼる湯気は、まるでつばめの羽ばたきのよう。ふわりと空へ舞うような香りに、工場中が包まれました。
そんな朝、ふと思いついて一句詠みました。
> 巣を結ぶ つばめにまじる 蒸気かな
春の名残と 夏の兆しと
季節の移り変わりを、こうして点心を作りながら感じることができるのは、この仕事の醍醐味です。湯気、香り、手の感触――どれも「いまこの瞬間」だけの尊いものです。だからこそ、一つひとつ丁寧に包み、心を込めて蒸し上げています。
私たちの点心が、だれかの食卓で笑顔につながっていれば――それほど嬉しいことはありません。
今後も、つばめたちが子育てをするように、私たちも大切に、一品一品を育ててまいります。
どうぞ、これからも京都点心福をよろしくお願いいたします。
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