八幡・流れ橋に立つとき――名奉行の面影をたどって

京都・八幡市の「流れ橋（上津屋橋）」を訪れると、時代の気配がふっと近づいてくるように感じます。 木津川に架かる木橋は、増水時には桁が流されることを前提に作られた珍しい構造で、人々が自然と折り合いをつけながら暮らしてきた知恵を象徴する存在です。

この流れ橋は、長年にわたり数々の時代劇の撮影地として使われてきました。 『大岡越前』もそのひとつで、素朴な木橋の風景は作品の静かな情緒を支える重要な舞台となりました。

実は、京都点心福のキャラクター「シュウマイ奉行」の先祖である 板倉勝重は、この「大岡越前」の人物像のモデルになったといわれています。 京都所司代として治安・司法・寺社政策から朝廷との調整に至るまで幅広い職務を担い、その公平な裁きは後の町奉行・大岡忠相の人物像に影響を与えたとされています。

そしてその勝重公の物語を継ぐかのように、現代の京都伏見で点心を包む「シュウマイ奉行」。 そして、そのゆかりある時代劇が流れ橋で撮られてきたことを思うと、偶然とは思えない不思議な巡り合わせを感じます。

立冬を越えた今、流れ橋には冬の気配が静かに漂い始めています。 朝霧が川面に薄くかかり、陽が差すと木橋が白く光る。 河原のススキが風に揺れ、どこを切り取っても時代劇のワンシーンのような景色が広がります。

旅の途中、温かい点心を持ってベンチでひと休みするのも悪くありません。 澄んだ風に湯気がふわりと溶け、京都点心福の焼売や餃子の香りが、この景色によく馴染みます。