【文暦二〇二五年 皐月二十二日　晴れのち曇り】 ――「ありがとう、聘珍樓さん」――

本日、工房に届いた知らせがひとつございました。 横浜中華街の老舗、「聘珍樓（へいちんろう）」さんが、しばらくの間、営業をお休みなさるとのこと。

創業は明治十七年。 日本における中華料理の礎を築き、長きにわたって人々の心と舌を魅了してこられた名店です。

その暖簾が今、いったん降ろされると聞き、なんとも言えない寂しさが胸をよぎりました。

でも、老舗というのはただ古くあることではなく、 代々受け継がれてきた「志」がそこにあるからこそ、本物なのだと思います。

灯が一度消えても、また必ず灯る。 そんな日が訪れると、私は信じています。

京都・伏見の片隅からではございますが、 私たちもまた、日々の仕込みに心を込めております。 ひとつひとつ、丁寧に、手を抜かず、まっすぐに。

聘珍樓さん。 これまで、たくさんの夢と味を、ありがとうございました。

いつかまた、その味と再会できる日を願いながら、 今日も私は湯気の中で、点心と向き合っております。

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